- 現代語訳
- あなたと逢うためなら惜しくもなかった命までもが、今では長くあってほしいと思うようになったよ。
- 所載歌集
- 後拾遺集 恋二 669
夭逝の貴公子
「もがな」は「~であってほしい」や「~でありたい」と自らの願望を表わす終助詞。あなたのためなら命も惜しくなかった、という恋が成就する前の一途な思いと対比し、この先も長くふたりの関係が続くことを願う。43「あひみての」が逢瀬の後から昔をふり返ったのとは対照的に、時間の流れるまま、一夜でがらっと変化した人生観を素直に詠む。逢瀬の余韻にまだひたっているかのようだ。義孝は早くから仏道への関心が高く、「惜しからざりし命」を、現世を仮の世として、そこでの命はいつ終わってもよいと思っていた、とする解釈もある。いずれにせよ、恋によって人生の新たな世界へ進もうとする若者の、希望に満ちあふれた一首。