- 現代語訳
- 夜が明ければまた暮れるものとは知りながら、それでもはやり恨めしい朝ぼらけだなあ。
- 所載歌集
- 後拾遺集 恋二 672
義孝の死から20年、疫病再び
43「あひみての」、50「君がためを」に続く後朝の歌。夜が明ければまた日が暮れることはわかっていても、この朝ぼらけが恨めしい。今夜も逢えるとわかっていて、それでも収まらない気持ちをいう。詠嘆「かな」からは、別れ際の未練にあふれたため息が聞こえてきそうだ。女への深い愛情がこめられる。『道信集』には「女のもとより帰りて」とあるだけだが、後拾遺集では雪の日の歌と伝える。夜明けに雪明りが重なり幻想的な景色になる。雪の降った朝ぼらけはいつもより明るい。雪にだまされて、それとは知らずに帰り支度をしたのであれば、ちょっと早すぎる。そのわずかな時間さえもったいない。「恨めしき」にはそんなぼやきも含まれる。