[2001年11月18日 文京区立かるた記念大塚会館]
第48期名人戦、第46期クイン戦の挑戦者決定戦11月18日(日)、かる た記念大塚会館(東京)で行なわれ、名人位の部では望月仁弘元名人が、クイ ン位の部は齊藤裕理六段が挑戦者の座をつかんだ。
名人戦の部は東日本代表の望月仁弘元名人(慶應かるた会)と西日本代表の 土田雅六段(福井渚会)が対戦した。1回戦は序盤過ぎから土田のお手つきで 望月がリードを奪う。中盤「あはれ」の時、土田が自陣右上段のあはじを払う ミスをした次、「あはじ」の出札を望月が急襲し9−16としたのをきっかけに 一気に連取をかさね、13枚差で先勝。2回戦では望月が先行し15−21と するが、望月は「もろ」の時にダブ。これをきっかけに土田の攻めが決まりは じめ13−14と1枚差まで詰め寄るが、52枚目「よを」で敵陣の「よの」 を豪快に払うお手でつまづき、望月はこれを機に3連取、さらに土田にダブが 出れば差は7−16と大きく開き大勢は決した。土田は終盤戻り手が冴えるが 望月は要所で着実に早い取りを見せ、最後は4枚差で勝って名人位挑戦権を獲 得した。
一方クイン戦の部。一昨年のこの舞台で涙をのんだ吉峰翼六段(東日本・埼 玉むさしの会)と昨年のこの場で敗れた齊藤裕理六段(西日本・京都府かるた協 会)が対戦。1回戦は序盤から吉峰がお手つきを連発し12枚差で齊藤が先勝。 2回戦は取り出しの吉峰のお手つきをきっかけ齊藤が先行し、中盤まで3~5 枚のリードを保ち優位に試合を進める。しかし吉峰は12−8とリードされた 61枚目「かぜを」から本領を発揮し、攻めて4連取すれば8−8のセームに。 片や齊藤もミスのない落ち着いた取り口で譲らず、終盤は一進一退の攻防が続 く。ナイスゲームとなった終盤だが吉峰は4−4から「おと」の時に「おぐ」 をさわるお手つき。齊藤はここぞとラストスパートをかけそのまま一気に5枚 差で勝ち、近江神宮へのキップを手にした。
望月・齊藤の両挑戦者が西郷直樹名人、渡辺令恵クインに挑む第48期名人
戦、第46期クイン戦は来年新春5日、滋賀県大津市の近江神宮勧学館で開催
される。3年ぶり7度目の名人戦となる望月挑戦者は勝てば4期めの名人の座
に就く。また3年前、名人のタイトルを奪った西郷名人へのリベンジの戦いで
もある。社会人となって練習をとりまく環境が大きく変わったやはり4期めを
めざす西郷名人にとって望月元名人は最も手強い挑戦者であり、その戦いは注
目である。
クイン戦もみどころは多い。大学生の齊藤はクイン戦本戦は初登場だが、選
手としてのキャリアは長く、舞台となる近江神宮は子供の頃からのホームグラ
ウンドのひとつ。今日の挑戦者決定戦はスピードをキープしながら安定した
堂々たる取り口で11期めを目指す渡辺大クインに挑む刺客としての格は十分
に兼ね備えている。最愛の母の死を乗り越えて精進に励む渡辺クインとの一騎
打ちは目が離せない。
名人位挑戦者になった望月元名人の話 「うれしい。今日は本調子ではなかっ たが相手のミスに救われた。名人戦本戦でどのようなかるたを取るかはこれか らゆっくりと考えたい」
クイン位挑戦者となった齊藤裕理選手の話「まだ先があるので嬉しいという よりちょっとほっとしている。去年はこの場であがってしまい自分のかるたを 取ることができなかったので普段どおりにとることを心がけた。憧れのクイン 本戦の舞台の雰囲気にのまれないよう頑張りたい」
川瀬健男審判長の講評「土田選手は自分のペースをつかめなかった。持ち味 の前半から押していくパワーが見られず残念。来年頑張ってほしい。クインの 方はお手の差が勝敗になった。吉峰さんには1回戦と2回戦途中まで手の迷い があった。素晴らしい素質を持っていることの証しで、2回戦の後半はきれい な手が出ていたがここでもお手つきがひびいてしまった。齊藤選手は2回とも 堅実で第一人者という感じがする。自分が西日本ということもあるが、ぜひク インを西日本に持ってきてほしい。」
松川英夫大会委員長講評「名人・クインの両方とも1回戦目は波に乗った方 がものにした。2回戦は1回戦の敗者が同じ轍を踏まないように頑張った挑戦 者決定戦だった。敗れた両者はお手のあとの処理が今後の課題である。」
[早川]