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2006-01-11
2000/01/08
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西郷直樹名人(早稲田大学かるた会)3−0土田 雅六段(福井渚会) | |||
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1回戦 | ○西郷直樹 | 2枚差 | 土田 雅● |
2回戦 | ○西郷直樹 | 4枚差 | 土田 雅● |
3回戦 | ○西郷直樹 | 11枚差 | 土田 雅● |
<1回戦>攻めを身上とする土田にとっては出札がよく、快調な攻めで5枚の リードを奪う最高の滑り出し。挑戦者を追う形になった西郷は折り返し直前に 1枚差につめよるが大山札でお手つきをして、土田にリードを広げられる。西 郷は70枚を過ぎて上段の攻防を制して5−5で追いつくが、88やまがの時に 元あった場所をさわるお手つき(取り損お手)で2枚差をつけられる。苦しく なった西郷はここで攻めて2連取し3−3のタイにすると、今度は土田が自陣左側の タテにならんだ「き」の分かれ共札で取り損ミスをして2−3と西郷にこの試 合初めてのリードを奪われる。最後は名人が2枚守って逆転の先勝。土田は課 題とされたお手つきが最後に出て勝ちゲームを逃した。
<2回戦>土田は出だしのお手つきでつまずき、西郷がスタートダッシュに成 功。一時6枚のリードを奪った西郷だが、23たちの時にダブお手。これで土田 は息を吹き返し、中盤戦は優位に試合を進め、西郷の2度のお手つきもあって 67枚目に8−9と逆転に成功する。しかし西郷はこのあと自陣の左右下段で 土田の攻めを上回る早い守りでラストスパート。最後は4枚差で勝ち、名人位 初防衛に王手をかけた。
<3回戦>序盤の均衡を崩したのは土田のお手。自陣右上段の23おとを取りに 行った際に敵陣上段をさわってしまい、これがダブルとなって西郷が15−2 1と大きくリード。この後土田の攻めは甘くなり、中盤以降は守りで食らいつ いていくがさらに2度犯したお手つきが足をひっぱった。攻守にキレが戻って きた西郷は油断せずに押し切り11枚差で勝利。
第46期西郷直樹名人の話「終わってほっとしている。プレッシャーで思うよ うに体が動かなかった。いい試合を見せて勝ちたいと思っていたがそうならな
かった。自分自身試合内容には不満がある。来年はこうならないようにしたい。」
第46期土田雅準名人の話「やっと終わったという感じ。練習はかなりハード にこなしたが…。また来年(今年)頑張ります」
<記者の眼>内容的には不満の残る名人戦であった。まず名人の取りに冴えと キレが感じられず、圧巻のシーンがほとんどなかった。このことは西郷名人自 身じゅうぶんに自覚しており、試合後マスコミに対して「いい試合をお見せで きなかった。1,2回戦はプレッシャーで思うように体が動かなかった。」と語 っていた。初防衛の重圧が取りに影響を与えていたのは事実である。しかし土 田の猛攻を上回る自陣左右下段の守りは見事なもので、この「迎撃パトリオッ トミサイル」が名人位初防衛達成の最高の武器となった。来年は、ああ堂々の 笑顔の防衛を期待したいものだ。土田挑戦者は攻めを磨いてきた。一昨年の挑 戦者決定戦の対戦時に比べてその攻めは鋭さを増し、1,2回戦はそれで見せ 場を作ったが、やはりお手つきが足をひっぱった。お手つきの回数は西郷より 1回少ないが、出てはいけないシーンで出てしまった。特に1回戦大詰めでの お手つきは初戦の勝利を逃す痛恨のものだった。名人位獲得には閉会式で遠藤 審判長が述べたような「二の矢」を戦術に加える必要がありそうだ。[早川]
一方今回のクイン戦は渡辺令恵クイン(横浜隼会)にとって9連覇のクイン 戦新記録と、堀沢永世クインがもつクイン戦13連勝のタイ記録がかかったク
イン戦。去年秋以降に出場した全国大会では2度の優勝を果たすなど順調な調 整を続けて本戦に臨んだ。
挑戦するのは片瀬亮子六段(九州かるた協会)。予選では昨年の挑戦者中筋(和 歌山)や優勝候補の一角斎藤(京都)を破り、吉峰(埼玉むさしの)との挑戦
者決定戦では逆転劇でクインへのキップを手にした。十年前の全国高校選手権 団体戦で主将として優勝した縁起のよい会場で夢に挑む。
渡辺令恵クイン(横浜隼会) 2−0 片瀬亮子六段(九州かるた協会) | |||
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1回戦 | ○渡辺令恵 | 10枚差 | 片瀬亮子● |
2回戦 | ○渡辺令恵 | 6枚差 | 片瀬亮子● |
<1回戦>渡辺は例年以上に不調でお手なども目立ったが、 全体的に常に押し 気味で終始 5-10枚の差をつけて試合の流れを作った。 片瀬もクインのお手な どを機に巻き返しを図ろうとするが波に乗り切れず、 クインのすばやい取りに 翻弄されてされてしまった。 結局10枚差で渡辺がクインの力を見せつける結 果となった。
<2回戦>後がない挑戦者、序盤から飛ばしてリードを広げ20-13と7枚差をつけ る。 しかし、ここからうまく立て直した渡辺、7連取で11-12と一気に逆転する。 その後は順調に札を減らす渡辺に対して、挑戦者は決め手がないまま6枚差で敗 れる。
第44期渡辺令恵クインの話「ほんとうにうれしい。応援してくれた方に御礼 をいいたい。片瀬さんは気合が入っていたし感じも早かった。そして私のかる
たをずいぶん研究してきていて私の取れないところを一枚一枚と取ってきた。 とても苦しい2回戦だったが、我慢をしながら差を詰め勝負どころを押さえて
流れを自分の方に引き寄せた。」
第44期片瀬亮子準クインの話「1回戦はクインを意識しすぎたが2回戦は開 き直って自分のかるたをすることができた。勝ち負けは意識しなかったが、取
りにはすごくこだわっていた。取り負けたくなかったし、完璧な試合をしたか った。楽しかったのでまたこの舞台でかるたを取りたいと思った。」
<記者の眼>クインを目指す全国の女流A級にはこれまで遠くに小さくしか見 えなかった渡辺クインの姿がはっきりと大きく見えたのではないだろうか?試
合後渡辺クインは「片瀬さんはよく私のかるたを研究していた。感じは早いし 気合も入っていた。落ち着いて見えたかもしれないが背中は汗でびっしょりだ
った。」と語っていたが、その汗には熱戦がもたらした汗だけでなく、間違いな く冷や汗が含まれていただろう。
渡辺クインは右手の突き指が慢性化していて「超スピード&超パワー」のう ちパワーの「超」がなくなっている。年齢的なものだろうかスピードも落ちて
いた。そして信じられないことだが今回は敵陣下段の攻めに甘さが見られ、そ れを察した(察していた)片瀬に攻略された。最終的には試合の要所をおさえ
たかるたを取れたことで試合を落とすことはなかったが、負けていても何の不 思議もない試合だった。
最近4年間のクイン戦で渡辺クインに対して枚数差10枚をきった挑戦者は 一人もいなかったが、初挑戦の片瀬が「あわや勝利」というところまで迫った。
明らかに感じられた渡辺クインのパワーダウン。しかし片瀬挑戦者の持ち前の 実力と渡辺クインのかるたの徹底的な研究なくしてここまでの善戦はなかった
であろう。片瀬にとって残念だったのは調子が万全ではなかったことだ。しか し渡辺クインの連勝記録を止めることはできなかったが、5期にわたって負け
知らずという鉄壁の渡辺クイン攻略の風穴をあけた存在して片瀬挑戦者の名前 はかるた界の記憶に残っていくはずだ。
9連覇を果たした渡辺クインに対して厳しい声が多く聞かれた。しかし、10年 近くにわたって女流かるたのトップを張りつづけること自体、大変な偉業
であることをまずじゅうぶんに賞賛すべきである。
渡辺クインは今回も積極的な遠征や出稽古をこなし、クイン位防衛のモチベ ーションはとても高かった。それだけに今回の苦戦は後を引く可能性がある。
どんなかるた選手にも年齢がもたらす壁は存在する。凡百のA級選手の一人で ある筆者は渡辺クインと同年齢だが、やはり20代後半に比べるとめっきりス
ピードとスタミナは落ちてしまった。こういう「年齢の壁」の存在は渡辺クイ ン本人もよく理解しているとは思うが、これまで挑戦者との間にあったパワ
ー・スピード・スタミナの貯金が確実に目減りしているわけで、その目減りを 補う何かを体得することがさらなる連覇への課題である。[早川]
▼名人位戦 1回戦
西郷名人 ○ 2枚 × 土田挑戦者
出札よく先行した土田を西郷が追う展開。 83枚目に5-5で追いついた名人だが、お手で5-3とリードを許す。 ここまでノーミスの土田は、3-3の時点で初お手。
2-3と初めてリードした名人は、自陣を2枚守って先勝した。
▼クイン位戦 1回戦
渡辺クイン ○ 10枚 × 片瀬挑戦者
渡辺は例年以上に不調でお手なども目立ったが、 全体的に常に押し気味で終始 5-10枚の差をつけて試合の流れを作った。 片瀬もクインのお手などを機に巻き返しを図ろうとするが波に乗り切れず、
クインのすばやい取りに翻弄されてされてしまった。 結局10枚差で渡辺がクインの力を見せつける結果となった。
▼名人位戦 2回戦
西郷名人 ○ 4枚 × 土田挑戦者
序盤は土田のお手つきもあって西郷がスタートダッシュに成功。 しかし西郷が好調時の冴えを欠き、淡々と取る土田に じわじわと追い上げられ接戦に。最後は西郷が得意とする
自陣左の守りが見事に決まり、4枚差で名人位初防衛に王手をかけた。
▼クイン位戦 2回戦
渡辺クイン ○ 6枚 × 片瀬挑戦者
後がない挑戦者、序盤から飛ばしてリードを広げ20-13と7枚差をつける。 しかし、ここからうまく立て直した渡辺、7連取で11-12と一気に逆転する。
その後は順調に札を減らす渡辺に対して、挑戦者は決め手がないまま6枚差で敗れる。 渡辺は9連続、通算12期目のクイン位を手にした。
▼名人位戦 3回戦
西郷名人 ○ 11枚 × 土田挑戦者
土田は序盤から中盤にかけて二つのダブルのお手つきを犯し、 1,2回戦に比べて自分のかるたを取り戻した名人が淡々と取り続け 序盤のリードを維持して大勝した。
西郷名人は名人位初防衛に成功した。
競技かるたのナンバーワンを決める第46期名人戦、第44期クイン戦が、 1月8日(土)午前10時から滋賀県大津市の近江神宮勧学館でおこなわれる。
名人戦は5回戦で先に3勝した方が名人位を獲得。クイン戦は3回戦で先に2 勝した方がクインの座に就く。
20世紀最後の名人戦・クイン戦となる今回の名人戦・クイン戦だが、名人 戦は去年、望月仁弘前名人(慶應)をフルセットの末の大逆転で破って名人位
についた西郷直樹名人(早大かるた会)に土田雅六段(福井渚会)が挑む。西 郷名人と土田挑戦者は一昨年11月の第45期名人戦の挑戦者決定戦(3回戦)
で対戦し、西郷名人がストレートで土田六段を破っており、土田としてはリベ ンジを賭けての名人戦となる。所属会は違うものの2人は早稲田大学の先輩・
後輩にあたり、いずれも20歳代前半の若さ。まだまだ力を伸ばしている若き 実力者二人のフレッシュでスピード感あふれる戦いが期待される。
名人位初防衛がかかる西郷名人は3日の太宰府大会で強豪を次々と倒して優 勝するなど仕上がりは上々といった感じ。一方の土田も先月12日の愛知大会
で渡辺クインに勝つなど挑戦者決定戦の力を維持しているもようで、好ゲーム が予想される。
一方のクイン戦は前人未踏のクイン位9連覇、通算12期めを目指す「平成 の大クイン」渡辺令恵永世クイン(横浜隼会)に片瀬亮子六段(九州かるた協
会)が挑戦する。
渡辺クインは秋以降好調を維持しており、先月5日の仙台での全国大会では 決勝で西郷名人に惜敗したものの準優勝するなど順調な調整を続けている。挑
戦者の片瀬六段は今月3日の太宰府大会こそ入賞を逃したが、3年前のクイン 戦で渡辺クインに挑んだ同会所属の池田実穂子選手らとじっくり取りこんでお
り力を出せる状況にある。
二人は2ヵ月前の宮崎大会準々決勝で対戦し、渡辺クインが6枚差で勝って いる。このような対戦成績などから渡辺クイン有利との下馬評が多いが、片瀬
挑戦者にとって会場となる近江神宮は10年前の高校選手権団体戦で優勝を果 たした縁起のいい場所でもあり、今回も好結果に結びつけたいところである。
この第46期名人戦、第44期クイン戦の模様は、8日(土)午後1時30 分から4時45分までNHK−BS2で生中継されるほか、夜11時35分か
ら結果がダイジェストで放送される。