ちはやサークルの取り組み

2024.10.14

石川県の競技かるたの拠点は、金沢市、小松市、かほく市の3カ所です。

拠点毎に練習会や初心者教室を開いているとのことですが、今回は金沢市での取り組み「ちはやサークル」を取材したので、以下のとおり紹介します。

 

1.ちはやサークル開設まで

金沢では、以前は特別に初心者向けの教室を設けていませんでしたが、金沢高砂会の練習場にフリーで通ってきた子ども(2人程度)はいました。教え好きで熱心な会員有志が自発的に指導している状況でした。

「長期的な選手育成には積極的な初心者教室の開設が必要だよ」とのアドバイスを受け、ちはやサークルを立ち上げたのは平成223月でした。アドバイスしてくれたのは福井県の前会長でした。今でも感謝しています。

初心者教室を開くにあたって問題は会場でしたが、都合よく62畳の和室がある金沢市民芸術村と長土塀研修館を借りることができました。募集はチラシを作成し、金沢市の教育施設や県の児童館に置かせてもらいました。開設当初は小学生の素人ばかりでしたが、しばらくすると初級者の部と中級者の部の日を分けて実施することとなり、現在に至っています。ちはやサークルという名前は、通っていた父兄が使いだし、それが定着したように思います。

 

2.指導の内容

初期の初心者教室(初級者の部)は、前述の熱心な会員が手作りの教材を使って、決まり字だけでなく歌全体を覚えさせることに力を入れていました。初級者の部の卒業者が中級者の部の教室に入ってくるのですが、押さえ手が多かったので、初級者の部でもはね手をしっかり教えてほしいと伝えたところ、はね手がすごく良くなりました。中級者の部は会長が直接教えることとしました。会長が毎回の試合開始前にかるたの技術的な事柄を話し、いろいろな質問に答えながら指導しています。

練習時の組合せは選手の対戦カードを作って決めていますが、誰とやっても負け続ける子が出てきます。そんな子こそ大切にしなければなりません。勝ったり負けたりする子はいいのですが、負け続ける子には会長が相手をして負けてあげます。これも前述の福井の前会長からの教えでした。小学2年生の時から通っていた子が一番弱かったので、いつも会長が相手になっていました。その子が今ではA級選手になっています。

 

3.父兄の協力と読手の育成

小学生の送迎は、ほとんどその子の母親が務めており、運営の手伝い等をしてくれるようになりました。中には読手をしてみたいと言われる人もおり、平成2612月から、A級公認読手にお願いして月1で読手の練習会を始めました。ちはやサークルの開設当初はありあけや朗詠ソフトを使っていたのですが、それらの方がB級公認読手の資格を取られた頃から生声での練習に変わりました。母親が読みの練習に励むと子供もその影響を受けて練習熱心になるように思います。今では2名のA級公認読手が誕生しています。

 

4.最後に

ちはやサークルでは、毎回の練習開始時に「石川かるた憲章」を唱和しています。

日常生活から離れ、「今からかるたを取るんだ」という気持ちの切り替えになればいいと思っています。内容は以下のとおりです。

石川かるた憲章

 競技かるたを愛する私たちは、日本の伝統文化の粋を集めた小倉百人一首を通し、全身全霊を競技かるたに傾注します。併せて礼儀礼節を重んじるとともに、自己実現を図り、一致団結して豊かな人間形成に取り組みます。

1 努力と忍耐と集中力により、無我の境地を目指します。

1 結果より過程を重視し、納得できるかるたを目指します。

1 課題を見つけることを怠らず、対応策を考え続けます。

1 かるたマン同志切磋琢磨して、競技力の向上に努めます。

1 競技できることに感謝し、素晴らしいかるたを披露します。 

 

【普及指導部より】

 石川県は横山会長のリードのもと、熱心に普及活動に取り組んでおられます。

 金沢市における「ちはやサークル」は10年以上も継続されており、父兄の協力を得ながら確かな成果を上げています。特に最後の「石川かるた憲章」は秀逸ですね。県協単位や登録会単位でここまでしっかりした方針を示している会はないと思います。私自身も自会で作成したいと思いました。全国各会の皆さんも取り組んでみたらいかがでしょうか。

 また、「一番負ける子の相手を会長自ら」ということは大切な視点だと思います。元A級選手の指導者は強くなる子にのみ目が行きがちです。弱い子、いつも負ける子に配慮しながら選手を育てていく考え方に感銘しました。