一日一首
ランダムに変わる取り札を見て上の句を当てる練習ができます。毎日の腕試しにご活用ください。
歌人
中納言朝忠
歌
逢ふことのたえてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし
現代語訳
逢うことがまったくないのだとしたら、かえってあの人の冷たさや我が身のつらさも恨んだりはしないのに。
出典
拾遺集 恋一 678
決まり字
あふこ(読み方: おおこ)
第71期名人位・第69期クイーン位決定戦は1月11日(土)滋賀県大津市の近江勧学館で開催され、名人位決定戦は名人位2度目の挑戦となる挑戦者の自見壮二朗七段(九州大学かるた会・23歳)が川瀬将義名人(三島せせらぎ会・30歳)を3-0のストレートで破り、初の名人位を獲得した。
また、クイーン位決定戦は挑戦者の高校3年生・矢島聖蘭八段(関東第一かるた会・18歳)が、クイーン初防衛をめざす井上菜穂クイーン(早稲田大学かるた会・25歳)を3勝1敗で下して、初めてのクイーン位決定戦挑戦で見事にクイーン位を獲得した。
なお、新名人・新クイーンが同時に誕生するのは、昭和60(1985)年の種村貴史永世名人(第31期名人)、北野律子元クイーン(第29期クイーン)以来40年ぶりである。
名人位決定戦、クイーン位決定戦ともにそれぞれ2試合が両者最後に1枚ずつを持つ「運命戦」となり、閉会式で川瀬健男大会委員長(元名人)は「4人全員が勝者と思いたい」と4人の健闘を称えた。
【序】
11日の大津市はうっすらと雪が積もり、比叡山も雪化粧。日本列島を強い寒気が包む中での決戦となった。
まずは、恒例により、松川英夫会長はじめ4選手や役員が近江神宮本殿に参拝。そしていよいよ、熱戦の火ぶたがきって落とされた。
名人位決定戦・クイーン位決定戦ともに「5本勝負」で先に3勝した方が名人位・クイーン位のタイトルを手にする。
【名人位決定戦】
★1回戦
序盤・中盤
午前9時52分。五味朋子専任読手が序歌を読んでスタート。初戦は両者ともにお手つきゼロ。攻守に素晴らしいスピードと取りの技術をもつ両選手の息詰まるような「攻め合い」と「しのぎ合い」が繰り広げられ、終盤に入るまで4枚差がつかない接戦となった。取り出しこそ自見が3連取してリードを奪うが、川瀬も4連取で逆転、以降はセームもしくは川瀬の僅差リードで試合は進む。
終盤・最終盤
接戦から抜け出したのは挑戦者の自見。9枚セームから66ありま を身上とする低く早い手で右に攻め、送ってからまもない67はるす も右攻め、69よも は「送り一発」の右攻め、続く71をぐ を左に攻め取れば5-9と4枚のリードを奪う。
両者3枚ずつ取りあって2-6となった場面で、川瀬は自陣の札を右に5枚左に1枚配し、守りの姿勢を強める。86ゆう ・87 おと を守った川瀬だが、88わがそ は自見がその守りをかいくぐる圧巻の攻めで1-4と残り1枚とする。川瀬はここで一息入れ天を仰ぎ逆転に望みを繋ぐも、最後は川瀬陣左に1枚だけ置かれていた92この を自見が確実に攻め取って4枚差勝ち。
自見は、4年前に挑戦した名人戦も含めて、名人戦での初勝利を手にした。一方、前夜の開会式で「去年4月以降は対外練習でも大会でもあまり調子よくなかった」と話していた川瀬は、次戦で巻き返せるかに注目が集まる。
★2回戦
序盤・中盤
ハイレベルな取り合いは2回戦の序盤も続く。挑戦者の自見はお手をするものの次の札をきちんと取って試合の流れを相手に渡さない。自見は20-18の2枚ビハインドから23あまつ 、24あさぼらけう を川瀬の攻めをブロックするような取りで奪って18枚セームに追いつく。川瀬の反攻は折り返し直前の「なにはえ」から攻守に8連取。中でも自見陣右下段の48す は得意の「突き攻め」で奪った。川瀬は57かく を取って7-12とするが、自見は62あけ から7連取し5-7と逆転する。
終盤
自見は、3-4の1枚リードから89もも 、90うか と自陣左下段で守って1-3とリーチをかける。対する川瀬も右で守りを固め、91きみがためを 、94なにし と守って勝負は運命戦に持ち込まれる。自見陣には「ながか」、川瀬陣には「たち」。木村俊昭専任読手が読んだ「ながか」を自見が冷静に払って勝利。連勝で目標の名人位にあと1勝とした。解説の本多未佳元準クイーンは「川瀬名人は本来のかるたがとれていない。休憩時間に修正できるか」と話していたが果たして…。
★3回戦
序盤
自見が勝てば初の名人位獲得となる3回戦。先行したのはこの試合を落とせば敗退が決まる名人の川瀬。自見のお手もあり20-23とリードするが、自見も3連取をして10枚までに19-23と4枚のリードを奪う。対する川瀬も16枚目時点で20枚セームに追いつく。
中盤
川瀬は18枚セームから31なにし 、33め 、34よを と攻め、36なにはが で自見がお手つきをすれば14-19と5枚のリードを奪って抜け出しにかかる。この日、お手つきの直後はしっかりリカバリーできている自見だが、この試合はこの中盤で「かぜそ」「きみがためは」「ひとも」とお手が続き、54枚時点で15-8と7枚の遅れをとる。だが、自見は55うら から左で守って2連取、1枚とられたあと59おおこ から4連取して9-7と2枚差につめよる。
終盤
川瀬はここで69かぜを 、70きみがためを と敵陣左を攻めて5-9。71もも は自見に守られるが73やまが 、74わすれ と攻めて3-8と差を5枚に広げる。一方「終盤に強い」自見はここから粘って3連取し5-3と2枚差まで迫ると、川瀬は84あはれ でお手つき、ついに4枚セームとなる。ここから試合はさらに白熱、両者2枚ずつ取って2枚セームとなった後自見は96あはじ を敵陣に攻め切って1-2と名人位に王手。対する川瀬は「ゆら」「みよ」を右下段に集め、読まれた97ゆら はしっかりとキープ。2回戦に引き続き、運命戦にもつれ込む。
運命戦
自見陣の1枚は「あきの」、川瀬陣の1枚は「みよ」。楠田倫之専任読手が読み上げたのは近江神宮の御祭神・天智天皇の「あきのたの」。自見はこれを確実に払って勝利。川瀬の三度目の名人位防衛を阻み、15人目の名人となる第71期名人位に輝いた。
閉会式での講評で、西郷直樹審判長は、「自見新名人は前回に比べるといい表情をして取っていた。勝ちを見据えたいい目をしていた。しっかり強い気持ちで取っていったことが接戦を制したポイントだったと思う」と評した。
一方、名人位決定戦で「鬼門」とされる3回目の防衛戦で敗れた川瀬に対しては、3期名人を務めた実績を称えた上で「目標は永世名人で変わらないと思うので『自ら険しい道のりの通算7期を選んだ』と、あとで振り返った時に思える日がくるようこれから益々頑張って欲しい」と激励した。