一日一首
ランダムに変わる取り札を見て上の句を当てる練習ができます。毎日の腕試しにご活用ください。
歌人
寂蓮法師
歌
村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮
現代語訳
村雨の露もまだ乾かぬ真木の葉に霧が立ちのぼってゆく秋の夕暮れよ。
出典
新古今集 秋下 491
決まり字
む
【名人位戦の部】
4期目を目指す粂原圭太郎名人に川瀬将義6段が挑む。二人は2018年秋、第65期名人位挑戦者決定戦において対戦し、接戦を制して本戦も勝ち抜いて粂原名人の誕生となった。直近では昨年4月の「第2回ちはやふる小倉山杯」で対戦しこちらも接戦を粂原名人が勝利している。粂原名人にとっては勝ちパターンを描ける一方で、これまでの対戦内容を見ると最も警戒しなければならない相手、川瀬挑戦者は越えなければならない最後の相手との対戦となり、緊張感のある最高峰の攻防戦が繰り広げられるだろう。試合の一番の見どころは粂原名人の右陣、最強の「盾」に対して、川瀬挑戦者の鋭い「矛」がぶつかり合うところ。貫くことができるのか、それとも跳ね返してしまうのか、ぜひご注目いただきたい。
粂原名人は今年も年下選手の挑戦を受けることになり、心理的にも防衛戦となる。昨年は最年少名人の記録がかかる自見挑戦者に対して、特に1,2回戦は受け身になる場面が多く見られた。その一方で3回戦では実力の差を見せつけるかのような取りを披露し、自身初の3連勝で防衛を果たしたことは大きな自信につながったのではないか。川瀬挑戦者に対しても受け身にならず、1回戦から勝負を仕掛けていく姿勢が望まれる。今回で通算5回目の本戦出場となり、調整や場の空気にも慣れ、高いパフォーマンスが期待できるだろう。昨年の「国民文化祭」では京都府を初優勝へ導き、「奈良大会」でも危なげなくA級優勝を果たした。心身そして戦略上も死角なしと言う状態まで仕上げてきているだろう。
一方の川瀬挑戦者はこれまで3度東日本代表となり、今回念願の挑戦権を得た。今年に懸ける意気込みは並大抵のものではない。昨春には結婚、転居という人生の大きな転機を迎え、三島せせらぎ会へ移籍して環境を大きく変えた。東日本予選、挑戦者決定戦は通過点に過ぎず、この名人戦で勝利するために練習量と質をアップさせてきた。相手陣への鋭い攻めに磨きをかけ、苦手とされた終盤戦も克服しつつある。名人戦の舞台で挑戦者としてどれだけ思い切った取りができるか、粂原名人の変則的な取りに対しても攻め続けることができるか、技術よりも気持ちの強さが試される。試合中にも大きく成長する可能性を秘めており、粂原名人を脅かす存在であることは間違いない。
最後に、これまでの名人戦の歴史を振り返ると4期目というのは大きなポイントとなる。名人位を3期務めた後に退いた選手は数多く、何かがあるのだろう。その一方で4期目を制した選手はいずれも永世名人となっている。粂原名人が永世名人への扉を開けるのか、それとも新名人の誕生となるのか、いずれにしても新たな歴史が生まれることになるだろう。
【クイーン位戦の部】
昨年3度目の挑戦で勝利を掴み取った山添クイーンに、22歳の矢野杏奈7段が挑む。過去に何度か対戦経験はあるものの、5年以上も遡るため参考にはならないだろう。山添クイーンは初防衛戦ということに加えて、同会の荒川元クイーンを破って出場を果たす矢野挑戦者との対戦にプレッシャーを感じているだろう。矢野挑戦者は調子の波も激しく、どれだけ力を発揮できるのか未知数ではあるが、ある意味では怖いもの知らずのところがある。試合の一番の見どころは矢野挑戦者陣の攻防、山添クイーンの攻めに対して、天性の感じの速さをもつ矢野挑戦者が守ることができるのか。お互いに得意とするところで主導権を握れるか、またそれが出来なかった場合に我慢ができるかどうかがポイントとなるだろう。
山添クイーンは昨年の本戦でストレート勝ちを収めた。高い集中力を発揮して正確に音を聞き分け、相手陣、自陣に関わらず縦横無尽に札を取り進めた。まさにお手本とするようなかるたを披露した。昨年一年間はそれを自信に変えて、もう一段高いレベルへ成長する機会であったが、コロナ禍によってクイーンとしての力を思うように伸ばすことができていない可能性がある。現に、昨年の「第2回ちはやふる小倉山杯」「国民文化祭」「奈良大会」と出場した大会では個人としては思うような結果が残せていない。本戦に向けて練習を重ね、矢野選手の対策も考えているだろうが、取りの技術が劇的に上がることは考えにくい。勝つために一番必要なことは自分のかるたに自信をもつことである。基本に忠実に音を聞き分け、相手陣を攻める姿勢を貫けるかどうかにある。これまで積み重ねてきた努力と経験を信じ、クイーンとして守るのではなく攻め抜いて欲しい。
一方の矢野挑戦者は、高校時代に女流選手権のタイトルを獲得するなど以前から将来のクイーン候補として期待されてきた存在である。大学4年となった今年、ようやく挑戦権を掴み取ったわけだが、東日本代表になってから本格的に練習を開始するなど、その取り組み姿勢は甘いと言わざるを得ない。但し、クイーンになりたいという夢を思い出し、学生という利点も生かして秋から猛練習を重ねてきた。このクイーン戦への挑戦が、かるたへの向き合い方を変え、成長につながることを期待したい。取りに関しては正確性に欠ける部分はあるが速さが最大の武器であり、山添クイーンのペースを乱す可能性を十分に秘める。若者らしく、そして挑戦者らしく一枚一枚を諦めずに追いかけて欲しい。
二年連続で新クイーンが誕生しており、今年の勝負の行方も分からない。どちらが主導権を握り波に乗るのか、3試合で決着する可能性も、5試合までもつれる可能性も考えられる。いずれにせよ勝ってクイーンになった選手は大きく成長するだろう。
※写真は第67期名人位・第65期クイーン位決定戦の写真です。